PROJECT STORY
プロジェクトストーリー

いままでにない光をつくる

――Synca Bright 開発ストーリー

「明るい」だけでは、照明は選ばれません。求められるのは、用途にふさわしい見え方を現場で再現できる照明です。鮮やかな発色と幅広い光色再現が特徴的な「Synca Bright」は、構想から約3年を経て完成した製品。遠藤照明らしい「やってみる」「やり切る」文化が色濃く表れた、プロジェクトストーリーをたどります。

PROJECT MEMBER

  • 坂本 裕弥
    中央研究所 商品企画部 企画デザイン課

    照明の企画全般に加えて、パンフレットや遠藤照明の全製品が載った総合カタログの制作などを担う。

  • 青木 亮介
    中央研究所 コア技術開発部 光学ソリューション課

    照明技術の中核を担う光学の設計担当。レンズや反射板など、照明に合わせた最適な設計を行う。

  • 上野 眞人
    中央研究所 コア技術開発部 光学ソリューション課

    照明の「光そのもの」をつくる役割。狙い通りの色や明るさが安定して出るように設計する。

  • 田中 一行
    中央研究所 コア技術開発部 ICT開発課

    照明の調光システム担当。器具内無線、ゲートウェイ(異なるネットワークを中継する機器)、操作UIなどを設計し、現場導入から保守までを見据えたユーザー体験をつくる。

Section 01
ユーザー好みの色を
再現できる照明づくり。

――「Synca Bright」のプロジェクトは、どのように始まったのですか?

坂本 照明の企画の出どころは大きく3種類、自分たちを起点に始まる自発提案、トップダウン、営業要望なんです。その中で、「Synca Bright」は営業要望から始まりました。Syncaをリリースして間もなく、Syncaの特徴である3色で多彩な色を表現できるという強みを別方向に生かせないかと模索し始めました。その中で、生鮮食品向けの商品として「Synca Bright」の企画が具体化していきました。生鮮食品売り場では商品がおいしそうに見える色味が重視されるので、ユーザーが好みの色に合わせられる照明をつくる、というのが起点でした。

青木 私と上野が所属しているのは、自部署を起点とした製品の企画や商品企画部からの「こういう商品をつくりたい」という要望に基づいて、必要な光学部品(レンズ・反射板など)と光源の検討・設計を担う部署です。自社で光源開発も光学部品設計も行い、そこを起点に何か良い商品ができないかを模索します。

上野 「Synca Bright」では私が光源の設計担当、青木が光学の設計担当です。

田中 私は照明本体を扱わず、調光のシステムを担当しています。主に無線の調光が領域です。「Synca Bright」では、色を選ぶUIの開発に携わりました。

坂本 仮称は「生鮮 Synca」から始まりましたが、生鮮食品に限定しない使い方が見えてきたので、「Synca Bright」に名前が決まりました。色味重視で好みも分かれる領域であっても、“お客様の好みの色にピンポイントで合わせられる”という強みは他社にはない。そこに手応えを感じて、「これはいい製品になるぞ」という予感がありました。ポイントは“3色をきれいに混ぜる光学技術”で、ここに遠藤照明の知識と経験が生きていると思います。

上野 「Synca Bright」はRed / Blue / Greenの3色をベースにしています。白色にしたときも赤の発色性が良くなる設計で、リンゴの赤やサラダに盛り付けられたトマトなどをきれいに見せるために選んだ3色です。一般的なカラーライティングとは異なる3色の光源を使って赤の発色性を高める、というアプローチなんです。

Section 02
本当に良いものを追求した、
3年間の開発期間。

――「Synca Bright」の開発における難しさは?

青木 難しかったのは、カラーミキシングです。「Synca Bright」は「Synca」よりもビビッド寄りの色味のため、これまでの設計方法では色がきれいに混ざりませんでした。また今回は食品スーパーでの使用を想定していたため、設置環境が明確に決まっており、求められる性能と理想的な色のミキシングをどう両立させるかが最大の課題でした。

上野 いままでにない光をつくるという前提で、LED選定・設計は非常に困難でした。開発には、光源は良くても、レンズが合わない、コストが合わないなどのトレードオフが常にあり、どうすれば製品として成り立つのか、という議論が付きまといます。カラーミキシングについては、光源開発と光学部品開発が同じ部署で対応しているので、密に連携してうまく解決できました。

坂本 商品企画としては、光学性能を実現しつつ“売れる照明”に落とし込む点ですね。「Synca Bright」は近年の照明としてはやや大きめで、大きく見せない・スマートに見せる工夫、食品スーパーを想定したコストも難しいポイントでした。私は開発部署に所属していた経験を活かして、自分で描いたスケッチを3D CADに落とし込み、海外工場と連携しながら仕様決めを前倒しすることができました。

田中 光源開発が難航していると聞いていたので、「いつリリースできるんだろう?」という心配はありました。システムのアプリケーションは年単位のリリースのペースになることが多いので、どのタイミングで合わせるかがポイントなんです。実装自体は既存の「Synca」をベースにできたので、比較的スムーズでした。システムの操作は専用タブレットかPCのWebアプリから行えて、器具内の無線モジュールをゲートウェイで管理しています。さらに「Synca Bright」のリリースにあわせてメインゲートウェイも開発し、新規UIやレスポンス向上により使い勝手や性能を高めました。

――「Synca Bright」のプロジェクトに、遠藤照明らしさはどのように表れていると感じますか?

田中 配線で色が選べる製品は競合他社にもそれなりにありますが、493パターンもの色をつくれるのは遠藤照明ならではだと思います。

坂本 私は完成に至るまでの過程に“らしさ”が出ていると思いますね。弊社のLED照明器具は開発期間が長くても約1年が多いなか、「Synca Bright」は企画がスタートして、トライアンドエラーを経てリリースできたのが約3年後。ここまで長い開発期間は、私が入社してからは少なくともなかったですね。「Synca Bright」は初期段階から金型試作に踏み切るなどのイレギュラーもありましたが、「お金がかかってもやってみろ」というようなノリが許容されて、かつ製品化までこぎ着けたのは、会社の風土だと思います。当初は約半年で完成する予定だったので、最初から3年かけてもいいと許されていたわけではないです(笑)。

青木 照明技術の中核を担う光学の部署には、社歴が浅い時期からある程度任せてもらえる環境があります。「この技術でこういうことができるはずだ」とプレゼンすると、まずはその方向で進めてみようと言ってもらえることが多いんです。「Synca Bright」の開発も若手中心のチームでしたが、自由に発想して試せる余白があったことは大きかったと思います。もちろん、納期が延びてしまったり、思うようにいかない局面もありました。ただ、そういうときに頭ごなしに止められるのではなく、「最終的に、本当に良いものを出せるかどうか」を一番大事にしてもらえる。粘り強く挑戦できる環境もあると思います。

上野 光源担当として開発を長引かせてしまったことは反省していますが(苦笑)、たしかにチャレンジ精神は遠藤照明らしさだと思います。社内でも「しっかりしたものを出すこと」を最終目的としていたので、途中で「もうやめよう」と止められることはありませんでした。製品化までやり切れたことは、挑戦を許容する社風のおかげですね。また、今回はプロトタイプの段階から営業を通じてお客様の意見を聞けたことも大きかったです。用途が生鮮向けと明確だったこともあり、求められている光を早い段階で共有できました。そのおかげで方向性を見失わず、色味や外観、使用シーンのイメージを固めることができた。開発段階からショールームなどでお客様の反応や声を直接伺いながら検証を重ねられることも、遠藤照明ならではだと思います。

Section 03
ようやく出せた、
安堵と手応え。

――3年間の開発期間を経て、「Synca Bright」が完成したときの気持ちは?

田中 改めて、色をたくさん選べるのがすごいな、と。

坂本 493パターンありますからね。使いこなせる人がどれだけいるのかは気がかりですが、ぜひ使ってほしいです。

青木 光学設計は一度完了していましたが、途中で光源の仕様変更があり、設計を一から見直すことになりました。3年かかりましたが「ようやくリリースできる」という安堵感が強かったです。

上野 構想段階まで振り返ると約4年前、そこからプロトタイプを作り、試して、また作り直してということを何度も繰り返して、完成形に近づけていきました。なので、「製品ができて感動した」というよりは、長い工程を経て「ここまで積み上げられた」という安堵感と達成感のほうが大きかったですね。最初に描いていた形とは細かい部分で変わったところもありますが、「どういう製品にしたいか」というコンセプト自体はブレませんでした。その軸を持ちながら改良を重ねて最終形にたどり着けたことは本当によかった。

坂本 私は「頼む、売ってくれ」が本音です(笑)。「Synca Bright」は通常製品を上回る企画台数を想定しているので。発売直後では、受注予約は企画台数を上回るペースになっていて、お客様の反応も良好だと聞いています。次の出店見積りに入れたいという声もありました。

Section 04
これからの光と、つくり手の視点

――照明の作り手として、今後、光を扱う技術の方向性はどうなっていくと思いますか?

坂本 今後の照明は“人に寄る光”と“社会に寄る光”の両面が進むと思います。人の快適さに寄る調色技術と環境配慮、多くはどちらかのトレードオフですが、そのどちらも両立した企画も今後はより重要になってくるでしょうね。個人的には、“個人としてやりたいこと”と“社会に求められること”の両立を模索していきたいです。

田中 システム担当としては、制御の複雑化は止まらないと思います。メインゲートウェイはしばらく多用途で使われると見ているので、今回の開発に関われてよかったです。

上野 照明はLEDが主流になり、明るさや色を調整できるように進化してきました。遠藤照明では「Synca」で太陽光に近い光を実現しましたが、太陽光が常に最適というわけではありません。空間や用途に合わせて“最適な光を選ぶ”という考え方が、これからより重要になってくるはず。「Synca Bright」は、その適材適所の光をより具体的に追求した製品です。環境に合わせて光を使い分けられる技術は、遠藤照明の強みでもあり、今後も深めていくべきだと感じます。

青木 私たちは日々、照明の未来を考えて仕事しているというか。多くの人は、照明を意識せずに勝手に光るものだと捉えます。自分としては、身近な気づきをストックして、新製品の開発に活かせないか考えています。良いアイデアがあればプロトタイプを作り、社内で相談したりヒアリングしたりしながら、お客様の声を聞いてブラッシュアップしていく。この流れが自然にできるよう常に意識しています。市場のニーズに応えることも大事ですが、「自分たちが良いと思うもの」をプロダクトアウトする姿勢を大切にしたいです。

――学生時代の学びが仕事にどう役立ち、その一方で、どんなギャップがありましたか?

坂本 私は機械工学の出身で、照明メーカーに入るとは思っていませんでした。ただ、学生時代にものづくりを通して身につけていた考え方や基礎知識があったので、仕事の話自体は意外とすんなり理解できました。一方で、大学と実務のあいだには思っていた以上にギャップがあって、理論では知っていることが、現場では実際にはできないという場面に何度も直面しました。頭では分かっていても、手を動かしてみると成立しない。そういう差分に最初はとても悩みましたが、その経験がいまの設計や判断の基準につながっていると感じています。

上野 私は電気系の出身です。光源を扱う上で基礎知識は常に求められますが、重要なのはその応用ですね。自社の強みを踏まえて、何を上積みするかが重要というか。営業の声、トレードオフのバランスなど、学校では学べないバランス能力は仕事の中で身につくと感じます。

青木 私も大学は電気系で、光学設計は未経験でした。計測系の研究をしている中で、就活のタイミングで「光は計測できる」というおもしろさを知り、光学の仕事を志望しました。入社後はイチからの勉強でしたが、興味があれば自然と吸収できますし、何事も最後までやり切る、好きなことに没頭できる人が向いていると思います。生成AIが広く使われるようになったいまの世の中で、自分で仮説を立てて、それを裏付ける根拠を積み上げながら、自分の答えを導き出す力が今後、重要になると感じています。

田中 学生時代は電子工学を専攻していましたが、実際に身についた知識は大阪・日本橋の電気街でのアルバイト経験が大きいです。その後、LEDが普及し始めた時期に転職し、当初は電源の開発をやりたくて入社しましたが、いまはシステム寄りの仕事が中心です。想像とは少し違いましたが、やってみるとおもしろさがありました。LEDは成熟してきていますが、照明の制御やソフトの領域にはまだ広げられる余地がある。そこに今後も関わっていきたいと考えています。

製品情報

Synca Bright

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